大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松地方裁判所 平成元年(わ)183号 判決 1990年2月14日

本店所在地

高松市木太町二四六五番地四

有限会社乃村工芸

右代表者代表取締役

乃村敏雄

本籍

高松市松島町二丁目一六一番地二

住居

同市木太町二四六五番地四

会社役員

乃村敏雄

昭和一〇年五月五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官田村範博出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人乃村敏雄を懲役一年に、被告会社乃村工芸を罰金一二〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人乃村敏雄に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人乃村敏雄の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社乃村工芸は、高松市木太町二四六五番地四に本店を置いて各種看板類の製作等を営むもの、被告人乃村敏雄は、右乃村工芸の代表取締役としてその業務全般を統括掌理しているものであるが、被告人乃村敏雄は、右乃村工芸の業務に関し法人税を免れようと企て、売上金額を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五九年八月一日から同六〇年七月三一日までの事業年度における実際の所得金額が三五八〇万九八二〇円で、これに対する法人税額が一四五二万一二〇〇円であつたにもかかわらず、同年九月二八日、同市天神前二番一〇号所在の高松税務署において、同税務署長に対し右事業年度における所得金額が零であつて、これに対する法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により前記正規の法人税額一四五二万一二〇〇円を免れ

第二  昭和六〇年八月一日から同六一年七月三一日までの事業年度における実際の所得金額が二四九四万三六五五円で、これに対する法人税額が九八一万六三〇〇円であつたにもかかわらず、右法人税の申告期限である昭和六一年九月三〇日までに前記税務署において、同税務署長に対し法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もつて不正の行為により前記正規の法人税額九八一万六三〇〇円を免れ

第三  昭和六一年八月一日から同六二年七月三一日までの事業年度における実際の所得金額が三九一二万一八二七円で、これに対する法人税額が一五四六万九三〇〇円であつたにもかかわらず、同年九月三〇日、前記税務署において、同税務署長に対し右事業年度における所得金額が三〇九万六六二六円であつて、これに対する法人税額が九二万七三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により前記正規の法人税額と申告税額との差額一四五四万二〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人乃村敏雄(以下単に被告人という)の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  乃村恵子の検察官に対する供述調書

一  同人の大蔵事務官に対する質問てん末書七通

一  井上貴由、羽原房子(二通)、麻植勝の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  小谷義彦、福西保一、弓削伸男、渡辺千秋、薬師神正茂、上野新爾、中村健三、大河祐治、二川幹生、中村幸夫(二通)、永峰輝尾、井上和夫、横井末義、谷川正雄、斉藤義郎、前田晃徳、片岡清、松田昭一、天田英孝、田村勝、岸下一夫、真鍋誠男、三井勝博、三宅文男、木内芳太朗、矢野紘昭、勝方敏和、小川征一、林達夫、渡辺武司(二通)、岩下誠一(二通)作成の各証明書

一  小笠原秀則、三井勝博、羽原房子、木内芳太朗作成の各申述書

一  大蔵事務官作成の告発書

一  高松法務局登記官作成の登記簿謄本

一  大蔵事務官作成の売上調査書(以下書類の表題のみ掲記したものはすべて大蔵事務官作成のものである。)

一  売上値引調査書

一  仕入調査書

一  給与手当調査書

一  接待交際費調査書

一  公租公課調査書

一  受取利息調査書

一  償還益等調査書

一  支払利息割引料調査書

一  預け金調査書

一  領置てん末書

一  差押てん末書二通

一  押収してある無題ノート一冊(平成元年押第五九号の4)

一  同じく売掛帳四綴(同号の12ないし15)

判示第一の事実につき

一  脱税額計算書(昭和五九年八月一日ないし同六〇年七月三一日までのもの)

一  繰越欠損金の当期控除額調査書

一  押収してある法人税確定申告書一綴(五九・八・一~六〇・七・三一)(同号の3)

一  同じく売掛帳二綴(五八・七~五九・七及び五九・七~六〇・八)(同号の5及び6)

一  同じく金銭出納帳一冊(五七・一一・~五九・一二)(同号の9)

判示第一及び第二の各事実につき

一  押収してある金銭出納帳一冊(六〇・一~六二・二)(同号の10)

判示第二及び第三の各事実につき

一  辻田正則作成の証明書及び申述書

一  金川政明作成の証明書二通

一  通信費調査書

一  水道光熱費調査書

判示第二の事実につき

一  証人滝華輝雄の当公判廷における供述

一  国税査察官作成の査察官報告書

一  脱税額計算書(昭和六〇年八月一日ないし同六一年七月三一日までのもの)

一  期首商品棚卸高調査書

一  福利厚生費調査書

一  外注加工費調査書

一  燃料費調査書

一  給食費調査書

一  運賃調査書

一  支払手数料調査書

一  経理費調査書

一  購読料調査書

一  研修費調査書

一  諸会費調査書

一  旅費交通費調査費

一  消耗品費調査書

一  減価償却費調査書

一  修繕費調査書

一  保険料調査書

一  容器包装費調査書

一  寄付金調査書

一  雑費調査書

一  損金の額に算入した法人税調査書

一  損金の額に算入した県市民税調査書

一  押収してある法人税確定申告書一綴(六〇・八・一~六一・七・三一)(同号の二)

一  同じく売掛帳一綴(六〇・八・~六一・七)(同号の七)

判示第三の事実につき

一  脱税額計算書(昭和六一年八月一日ないし同六二年七月三一日までのもの)

一  竹内誠治郎作成の証明書

一  寒川芳郎の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  押収してある法人税確定申告書(六一・八・一~六二・七・三一)(同号の1)

一  同じく売掛帳一綴(六一・八~六二・七)(同号の8)

一  同じく金銭出納帳一冊(六二・三~)(同号の11)

(法令の適用)

被告人の乃村敏雄の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、右各違反行為は、被告会社乃村工芸の代表者である右乃村敏雄が被告会社の業務に関してしたものであるから、同法一六四条一項により被告会社に対しても同法一五九条一項所定の罰金刑を科することとし、被告人乃村敏雄については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同被告人については同法四七条本文、一〇条により犯情のもつとも重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告会社については同法四八条二項により右各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内でそれぞれ処断することとし、同被告人を懲役一年に、被告会社を罰金一二〇〇万円に各処し、同被告人に対しては情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文を適用して同被告人に負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 大野孝英)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例